『コラテラル』 [映画]
レンタルGEO(ゲオ)に登場と同時にリストアップ。結局、1か月待って、ようやく届いた。
「Collateral」は、辞書を引くと、「平行」とか「並んで~」「付随する~」という言葉がならんでる……。
ああ、そうか、主役のトムと準主役のジェイミー・フォックスが(巻き込まれ型とはいえ)ともに行動することか、なぁんて納得していたら。物の本に「巻き添え」という意味だとあった。ああ、そっちの意味だったのね。
まぁ、そんなことはともかく、やたらトム・クルーズがカッコイイ。豊かな銀髪にサングラス、無精ひげ。アッシュ・グレーのスーツを着こなして、“ぱっと見”はどこかの年配のエグゼクティブ。実際に、“仕事”をこなすのにペンタブレット式のノートPCを使ってるし――依頼人のほうもメモリーを渡す、という方法でやってるんだけど。←これは物語上の重要なシーンに繋がってゆくのだけど。
イメージ的には、完全に『ラスト・サムライ』の路線(?)。
これまでのトムの、若々しく逞しく、身のこなしが軽い感じは、さらさら感じさせない。とはいえ、ラスト近くのクラブ・シーンでは、「うわっ、コワッ!」と叫んでしまったほど、スピードと切れのあるアクションで敵をぶちのめしてゆくところは、さすが。
しかし、「殺し屋」とはねぇ。悪役、いわば汚れ役?
準主役?のジェイミー・フォックスがオスカーを取ったことで、小林信彦だったか、新聞コラムでトムのことを「受けの芝居に徹し、ジェイミー・フォックスを持ち上げた」なんて書いてたけど、最初は、なんか中途半端だなぁと感じたのはたしか。序盤はともかく、話が進んでゆくと、活躍しだすのはジェイミー・フォックス扮するマックスのほうだし。
最初のアクシデントで、マックスのタクシーを使わなければならなくなった、という理由は、それなりに効いていると思うけれど、なんで自前の車じゃなくて、タクシーなの? とか、突っ込みどころは結構アリ。遠くからやってきて、アシがつかないようにしてる、ってことでしょうか。(^_^;
ヴィンセントは、いかにも殺し屋らしく? マックスが呆れるほどの冷酷な面があって、「夢を持って生きてたって、それが何だ」みたいなことを言う。マックスも、夢だけは壮大なものを持っていて、口癖のようにお客に言ってまわってるんだけれど、そのために努力してるようすはなし。それを指摘されて、ぐうの音も出ない。
「60億人いるうちの1人だ」
殺しをマックスに非難されて、ヴィンセントが答えたセリフ。
どこだったか忘れたけど、紛争地でも毎日、大勢の人が死んでいる、というセリフもあった。殺し屋に、この世の、地上の現状への皮肉を言わせるなんて、なかなか。(よくあるパターンだけど)
「知らない人間を殺すのか」「知り合いになってから殺せと?」
このあとで、殺す相手とテーブルを挟んで話す、というシーンがあって、これも、天の邪鬼な?ヴィンセントの一面が出ていて、面白いシチュエーションというか。
とくに前知識を仕入れずに見たものだから、最初は舞台はニュー・ヨーク? と思った。高層のビル群、繁華街、スラム、タクシーがイエローじゃなくて「あれ?」と思ったのと、セリフ「LA」が出てこなかったら。勘違いしたままだったかも。とはいえ、しっかり椰子の木の並木道が出てきてたけどね。
一夜のドラマを描いているので、夜のLAてのは、見方を変えるとこんな風なのか、という興趣もある。
ストーリー自体は、???な部分てのは多々あるんだけれど、それを補って余りある魅力が、この映画にはあると思う。
脚本は映画のために作られたもので、原作はないようだけど、早川書房あたりから出ていてもおかしくない感じ。というより、こういう話、雰囲気とかテーマとか、活字のほうがより魅力的に描けるような気がする。
♪蛇足:マックスがめがねを外すと、意外に(!)イイ男、というシーンもあって、おかしかった。いや、もしかしたら、夢を口先だけで唱えていた彼が“変身”した瞬間を暗示していたのかも。だとしたら、芸が細かい。
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