『バッテリー』 あさのあつこ:著 [児童書、YA]
(9月にいったん書いたエントリーを、見直して手を入れました)
- 作者: あさのあつこ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
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↑これは、最近出た、文庫版。
私が読んだのは――といっても当時は、図書館で借りたのだけど――教育画劇から出ている版。
教育画劇 (1996.12)
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この本の主人公、巧(たくみ)の弟は青波(せいは)――これって、ブルーウェーブ? ってのはおいといて。
タイトルどおり、野球をする子たちのお話。最初は、過去に出版された、よく似たタイトルのコミックスを連想して、う~ん、と思っていた。文庫版が出たことで、文字通りの青春スポーツ物と捉えている人もいるみたいだけど、それだけじゃないと思う。
されど児童書、さすがに児童書。
野球そのもののお話ももちろん出てくるけれども、野球を通して子どもたちが成長してゆく、周囲の大人が変わってゆく姿を描いて、重い。深い。
実は私は、あまり野球は好きじゃない。
いや、高校生くらいまでは、「ドカベン」なんかも夢中で読んでたし、高校野球も熱心に見てた。心のどこかで(おなじくらい、サッカーも中継してくれないかな)とは思いつつ。
野球はどこか、監督のもの、という意識がある。今年の高校野球のTV中継を見ていても、バッターボックスに立った子どもたちは、いちいち監督を振り返り、サインを確かめていた。
ゲームを進めてゆくのは監督。もちろん、そんな形ばかりではないだろうけれど、でも、高校野球の世界では、やっぱり監督の存在ってのは限りなく大きい。そう感じる。
サッカーのA代表で、現監督のジーコは、自主性を重んじる手法を取っている、という。選手が自ら考え、自ら動く。そこに基本がなければ、どんな戦術を使っても、結局はそれ以上の力は出せない、そんな論も、どこかで読んだ。
本の内容から少しはずれてしまったようだけれど、この本に出てくる子どもたち、とくに主人公の巧は、実に“そこ”にこそ苦悩の元がある、といってもいい。自らをたのむ気持ちが大きくて、頑固、意固地。今どき珍しいと読んでるほうが感じるくらい、自己主張が強い。チームの監督とも、簡単に反抗してしまう。
そんな巧に対峙するのが、キャッチャーの豪(ごう)という男の子。
ある種、類型的かもしれない。孤高の存在のピッチャー、鷹揚でいかにも女房役のキャッチャー。反発し合いながら、切磋琢磨しながら、お互いを認めてゆく。
けれど、あえて“児童書”として子どもが読むならば、この関係は、とても心に響くのではないだろうか。
巧と青波兄弟の母親が、ちょっと問題あり風に描かれているのが、気になるといえば気になる。でも、同じ母親として、やっぱり子どもをダメにするタイプの女性っていると思うから、しかたがないのかも。それに、(同じく母親である)著者の目はやさしくて、彼女にも成長の余地を残しているところが、読んでいて気持ちがいい。実際、巻が進むと、母親も多少、変化してくる。
こんな風に、単なる野球を中心とした物語、というだけでないところが、(野球嫌いの)私が大いに気に入ったゆえん。
著者紹介がさいごになってしまった。「あさのあつこ」さん。ご本人が言ってるとおり、某女優さんと同じ名前で、言葉=音で伝えると、「え?」という顔をされるそうな。
児童文学の同人誌で腕を磨き、ある意味、この作品でブレイク。ますますのご活躍を!
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