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 『バッテリー』 あさのあつこ:著 [児童書、YA]


 (9月にいったん書いたエントリーを、見直して手を入れました)

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)

 ↑これは、最近出た、文庫版。



 私が読んだのは――といっても当時は、図書館で借りたのだけど――教育画劇から出ている版。

バッテリー
バッテリー
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.13
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子
教育画劇 (1996.12)
通常24時間以内に発送します。


 この本の主人公、巧(たくみ)の弟は青波(せいは)――これって、ブルーウェーブ? ってのはおいといて。

 タイトルどおり、野球をする子たちのお話。最初は、過去に出版された、よく似たタイトルのコミックスを連想して、う~ん、と思っていた。文庫版が出たことで、文字通りの青春スポーツ物と捉えている人もいるみたいだけど、それだけじゃないと思う。

 されど児童書、さすがに児童書。

 野球そのもののお話ももちろん出てくるけれども、野球を通して子どもたちが成長してゆく、周囲の大人が変わってゆく姿を描いて、重い。深い。


 実は私は、あまり野球は好きじゃない。

 いや、高校生くらいまでは、「ドカベン」なんかも夢中で読んでたし、高校野球も熱心に見てた。心のどこかで(おなじくらい、サッカーも中継してくれないかな)とは思いつつ。

 野球はどこか、監督のもの、という意識がある。今年の高校野球のTV中継を見ていても、バッターボックスに立った子どもたちは、いちいち監督を振り返り、サインを確かめていた。

 ゲームを進めてゆくのは監督。もちろん、そんな形ばかりではないだろうけれど、でも、高校野球の世界では、やっぱり監督の存在ってのは限りなく大きい。そう感じる。

 サッカーのA代表で、現監督のジーコは、自主性を重んじる手法を取っている、という。選手が自ら考え、自ら動く。そこに基本がなければ、どんな戦術を使っても、結局はそれ以上の力は出せない、そんな論も、どこかで読んだ。

 本の内容から少しはずれてしまったようだけれど、この本に出てくる子どもたち、とくに主人公の巧は、実に“そこ”にこそ苦悩の元がある、といってもいい。自らをたのむ気持ちが大きくて、頑固、意固地。今どき珍しいと読んでるほうが感じるくらい、自己主張が強い。チームの監督とも、簡単に反抗してしまう。

 そんな巧に対峙するのが、キャッチャーの豪(ごう)という男の子。

 ある種、類型的かもしれない。孤高の存在のピッチャー、鷹揚でいかにも女房役のキャッチャー。反発し合いながら、切磋琢磨しながら、お互いを認めてゆく。

 けれど、あえて“児童書”として子どもが読むならば、この関係は、とても心に響くのではないだろうか。


 巧と青波兄弟の母親が、ちょっと問題あり風に描かれているのが、気になるといえば気になる。でも、同じ母親として、やっぱり子どもをダメにするタイプの女性っていると思うから、しかたがないのかも。それに、(同じく母親である)著者の目はやさしくて、彼女にも成長の余地を残しているところが、読んでいて気持ちがいい。実際、巻が進むと、母親も多少、変化してくる。

 こんな風に、単なる野球を中心とした物語、というだけでないところが、(野球嫌いの)私が大いに気に入ったゆえん。


 著者紹介がさいごになってしまった。「あさのあつこ」さん。ご本人が言ってるとおり、某女優さんと同じ名前で、言葉=音で伝えると、「え?」という顔をされるそうな。

 児童文学の同人誌で腕を磨き、ある意味、この作品でブレイク。ますますのご活躍を!



★bk-1で見る 〔文庫版〕


〔教育画劇版〕

バッテリー 2
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子
バッテリー 3
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子
バッテリー 4
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子
バッテリー 5
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子
バッテリー 6
あさの あつこ / あさの あつこ作 / 佐藤 真紀子



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バッテリー〈2〉 (角川文庫)

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〔教育画劇版〕

バッテリー (教育画劇の創作文学)

バッテリー〈2〉 (教育画劇の創作文学)

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