『夏子の冒険』 三島 由紀夫:著 [小説]
しばらく前に、古書店で購入した『夏子の冒険 (角川文庫 緑 212-6)』(表紙画像が出てこないな~)、ようやく読了。
ようやくというのは、私より先に娘が「読む!」と持っていってしまったのが原因ですけどね。
それはともかく、これを、わざわざ古本屋で探したのは、『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて』の元ネタ――某中○新聞の夕刊で連載していたコラムで興味を持ったから。連載自体、面白く読んでいたのだけど、そのときに「へぇ、三島由紀夫って、そんな本も出していたのか~」と思ったのがきっかけ。
そんな苦労して手に入れたのに、最近、復刻版が出てビックリ。『文藝ガーリッシュ~』の影響もあるのかしらん。
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お話自体は、ジュブナイル的な軽いノリで読める。今なら“三島がライトノベルを書いた!”てなものか。そうはいっても、そこは三島。文章は流れるように綺麗だし、物語もしっかり作り込んである。背景となる北海道の風俗、描写もプロフェッショナル(って、どういう褒め方や)。
なので、筋書きや夏子の性格設定などの少々の古くささは、目を潰れる範囲内。
ただ、夏子がプチブルなお嬢様で、何か分からない“情熱”に突き動かされて、一見わがままに見える行動を取る、というあたりは、この本の書かれた“時代”を考え合わせないと、理解しづらいかもしれない。
自由なようでいて、実は生きづらさを感じている現代の女性たちには、共感できる部分が大きいのではと思うけれども。
世は“草食系男子がモテ”うんぬんとやっているけれど……。反面、女たちは、夏子のように“情熱”を内に秘めた男性を求めているのでは、とも思う。自分自身が、その情熱を表現できる女性たち以外は、ということだけれど。
――ということは、この本の時代の女性は、“自分自身で表現”が出来なかったからこそ、相手にそれを求めたんだなと、そういったことも透けて見えてくる。(“本当は肉食系が好き”とか、そういう意味ではないので念のため)
そういえば……草食系ではないけれど、物語の最初のころに夏子が、付き合っている男性陣を昆虫に喩えて評しているところがあって、笑ってしまった。甲虫、蟋蟀=キリギリス、紋白蝶etc. さしずめ「昆虫系」か?
それにしても「熊撃ち」なんて超非日常、現代では味わえないイベントですよねぇ。
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