須永朝彦「天使」~復刊? [小説]
先月あたりだったか、久しぶりにこの作家さんの名前を耳にして、ためしに図書館を検索してみたら入っている! ということもあって読んでみた本。
かなり以前に、"耽美"というキーワードで存在を知り、いつか図書館で借りようと思いつつ、そのままになって今に至っていた。
それが今回、(Amazonではなく)bk-1からのお知らせで、復刊(?)を知った。
怪奇モノのアンソロジー作りや、過去の作品の復刻などに精力的に取り組んでいらっしゃる東雅夫氏のプロデュース(?)。これも、その復刻のリストに引っかかったのかな?
あとは――巻末に解説とあるので――、例によって?千野帽子さんが絡んでいる様子。
このごろは少々、帽子氏の文章に飽きが来ていたとはいえ、いわゆる「女子供用の」――いや、子ども向きの本は、ある意味、地位をきっちりと築いているから、「女」のみ、というべきか――本は、文壇史からは無視、あるいは抹殺されてきた、という歴史がある。
それらの隠れた、埋もれた作品群に、あらためて日を当てる作業には、感謝の意を込めて拍手を送りたいし、エールを送り続けたい。
さて、図書館に入っていたのは、自費出版かと思えるような、聞いたこともないような出版社のものだったので驚いたのだけど。大型で、分厚い表紙は、そこそこ豪華。活字も大きめで、むしろその点が、この手の本には少々品に欠けるように感じられたものの、めっきり視力の落ちている私には、読みやすくありがたかった。
それが新装オープンとか。
カバー(装丁)が変わり、後書きが付けば、内容も違ってみえるかもしれない。
私が図書館で借りて読んだのはこちら。↓
(表紙画像が出ませんね)
内容的には、古い作品のせいか、類型的というか、同人誌の域を出ないというか。(ちょうど、中島梓さんが「JUNE」を盛り上げようとしていたころに、この手の作品があったなぁと思い出す) 文章体が、こうしたテーマにしては、荒っぽく即物的なので、深みがないと感じてしまう。
単純に、テーマそれ自体や、プロットを楽しむというか。
鏡花的な文章だけが耽美じゃないと言われれば、たしかにそうなのだけど。テーマにそぐわぬ(?)荒っぽさが面白い、という読者もいるかもしれない。
先程も書いたように、文壇史からは無視、あるいは抹殺されてきたような、非日常的で退廃的なテーマという意味では、復刊で次の時代に存在を知らしめておくのは有りなのかもしれない。このごろは、こういうテーマを、こんな風に書く作家さんも減ってきてる感があるので。
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