SSブログ

 『ハサミ男』文庫版 [ミステリー、SF]





 見てから読むか、読んでから見るか。

 昔、そんなキャッチコピーが世間を席巻していた。角○書店が映画を作っていた頃。(コピーは逆だったかも)

 その差は結構、大きいと思う。


 2年前にDVDを見たことで、娘の方がハマって(?)しまい、この文庫を買ってきて読んでいた。「映画とは、ずいぶん違うよ~」というのが、当時の娘の感想だった。

 私は映画を見て満足し、そのままになっていた。

 今回、再度、映画を見直して、ちょっと読んでみる気になった。

ハサミ男 (講談社文庫)
殊能 将之
講談社
売り上げランキング: 65656

★キーワード:ハサミ男 (講談社文庫)


 映画を先に見てしまったので、トリックを暴く楽しみ、犯人捜しの楽しみは無し。――もっとも、原作と映画版では犯人が違う、なんてこともあるので、それなりに心の準備(?)はしてましたが。

(ネタバレ注意)



 「メフィスト賞」ものは、内容優先で文章そのものは今イチ、といった印象。なので、“本読み”を自称する者としては、少々物足りない。

 まぁ、その辺はデビュー作ということもあるのだろうけど、文章が描写というより説明的で、本の中の世界へ入りづらい。

 とくに主人公の一人称の章は、トリックの一部ということもあるのかもしれないけれども、パーソナリティを感じられないので、殺人も自殺願望もピンと来ない。トリックとしてはフェアなのだけれど、抑制しすぎたのか、単に技量不足なのか……。

 むしろ、三人称で書かれている警察でのやりとり、刑事たちの話のほうが生き生きとしていて、作者も楽しんで書いている感じがした。


 クライマックス、犯人が判明して展開が早くなるところは映画とほとんど同じ。ただ、唐突感は否めない。え? いきなりここで? という思いを抱く。

 そしてラスト。映画がより人の心の深層にまで迫る勢いだっただけに、この結末かよ~、と。

 結局、チカはどういう人間だったの? とか、これからどうなるの~、といった疑問が解決されないまま、断ち切られた感じ。


 まぁ、トリックを楽しむタイプの小説なのだろうから、これ以上、ケチを付けるのは間違いだろう。映画を先に見てしまったから、その映画を楽しんでしまったからこその感想かもしれない。



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。