『黄色い目の魚』佐藤多佳子 [児童書、YA]
佐藤 多佳子
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文庫本になったと言えば、この本もなりましたね。
私は話題になっているときに単行本で買って、「これはオーケイ♪」と思いましたです。(以前にエントリーで書いたと思ったのだけど、まだだった……)
(単行本)
短編集で、主人公は同じ。登場人物によって主語が入れ替わることはあるけど、基本的に「みのり」ちゃんが主役。
この作者は『サマータイム』とか、ちょくちょく読んでるけど、どちらかと言えばファンタジーっぽい、ほんわかとしたお話を書く人、という印象があった。それが、この作品では、おなじ青春物でも、きっちりとしたリアルな人間関係や物語を描いている。
でも、文章はあったかく優しく(易しい、じゃないですよ)、すんなりと胸に落ちてくる。
先日のエントリーに書いた『蹴りたい~』は、たしかに芥川賞に匹敵するだけの、現実的な人間心理が描かれていたかもしれないけど、(私には)正直、シンドイ。もうこれ以上、人間のドロドロとした精神や顔なんて見たくないし、卑屈さ歪さなんて、今さら教えてほしくもない。
そんな気持ちでいる者にとって、『黄色い目~』の持つ爽やかさは貴重だと思う。
といって、おとぎ話が書いてあるわけじゃない。なんていうか、“ひねくれてない(いや、多少ひねくれてても)、ちゃんと生きていこうとしている人間たち”が出てくるので、それだけで安心できるのだ。
ああ、世の中も捨てたものじゃないなぁ、と。
余談だけど、昔は、本屋で立ち読み、図書館で読んでから、実際に買って手元に置く、なんて二度手間なことをしていたんですが、ネット書店ができてから、どうも“衝動買い”が多くなって。
リアル書店だと、手にとってパラパラめくって、値段を見て、お財布と相談して、買おうか買うまいか決める。その段階を経た手順が、ネットだとすっとばしになってしまう。
そんなこんなで、「シマッタ……」と思う本が増えてしまった。そのくせ、肝心の、「これは絶対、買おう」と決めたはずの本を、未だに注文してなかったり。
とはいえ、今日、書いた本は、オススメです。
とくに、いわゆる純ブンガクの、ちょい重い暗めの描写が苦手な人にとっては。(^_^;
★bk-1
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『ガラスのうさぎ』 高木 敏子:作 / 武部 本一郎:画 [児童書、YA]
昨日に引き続いて、太平洋戦争ものを。
- 作者: 高木敏子,武部本一郎
- 出版社/メーカー: 金の星社
- 発売日: 2000/03
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 3回
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大量の焼夷弾を落とされた街が焼ける。家いえが燃える。その熱で、ガラスで作られた兎の置物が溶ける。
ずいぶん前、古本屋で(新古書店ではなく)見つけて新書版を買った。おなじ金の星社の、フォア文庫のもの。表紙は、(実写)映画になったときのスチルが使われていた。
それを中学生の子どもの本棚に入れておいたら、今年の夏休みの読書感想文用に読む、と言い出した。
折しも戦後60年。アニメーション映画になるという話も聞こえてきて、調べてみたら、本当だった。★「長編アニメーション映画 ガラスのうさぎ」サイト
本も、かなり前だけれど(2000年)新装版が出ていた。
それが、画:武部 本一郎の表紙のもの。
驚いた。この“挿絵画家”の名前は、SFファンにはおなじみ。私自身も、小学校の中学年のころ、学級文庫にあった『火星のプリンセス』の表紙絵を見て、俄然、興味を引かれ、手にとったクチ。どこか和風の香りのする顔立ちと、洋風(?)な肉体の豊満さとのアンバランスが、小学生といえども胸をトキメかせるには充分だったのかも。(^_^;
それはともかく、惜しくも武部画伯は亡くなっているし、最初に出版されたときの表紙、ということだろう。
語りつぐ戦争-「ガラスのうさぎ」によると、アニメーション化の話は、ちょいちょい出ていたらしいが、これまでは、原作者の高木敏子さんが納得しなかったとか。サイトによると、テレビ的な騒音めいた音がいやだった、とあるが、見る方にしても、この手のアニメは、いかにも文科省認定というか、絵柄が似たり寄ったりで、行く気が失せる。内容そのものは、語り継がなければいけない、とは思いつつ。
でも、本が、ロングセラーということは、地道に親から子へと手渡されていると言うことで、少しは安堵の気持ちがわいてくるというもの。(今の世の中、わが子に本を与えているのは母親だろうから、日本の母も捨てたものじゃないという気にもなる)
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“ブッククロッシング”なる言葉を [児童書、YA]
初めて聞きました。はてなのブックマークを覗いていて、見つけた。
米国発 広がる「ブッククロッシング」
街中を図書館に! 読み終えた本をわざとカフェや駅に放置し、偶然手にした人にまた読んでもらうという「ブッククロッシング(BC)」の活動が世界中で広がっている。本には専用のID番号がつけられ、インターネットにアクセスすれば、その本がどのような経緯で自分の元へたどりついたか確認できる。2001年に米国で始まり、150カ国以上、35万人の読書家たちが参加。百九十九万冊の“蔵書”は、今日も世界のどこかで読まれている。
5月8日(日)東京産経朝刊より
運動自体は、もうかなり前から始まっているようだけど、日本で今ごろ記事になるってことは、ようやく“上陸”してきた、ってことでしょうか。
内容そのものは、なかなか楽しくて良いこと、に思えるけど、これで“活字好きを増やす”ってことになるかどうか……。“本好きの輪をつくる”ってことなら、おもしろがる人は多そうだけど。
ICタグが、本がそこへ来た経緯を追ってくれる、というけれど、ケータイのGPS機能みたいなもん?
でも、なぁ。日本でその手の運動?が根付くでしょうか。その辺のカフェに本が置かれていたら、手にとるか? ただの忘れ物として片付けられてしまうのでは? 公園のペンチに置いてあったら。やっぱり、うさんくさいと交番なりに届けられてしまうのではないだろうか。運動のことを知ったテロリストが利用したら?
嗚呼、なんか逆撫でするようなことばかり書いてますが、本好きの善意に頼るには、壁が多そうな気がしないでもない……。
『バッテリー』 あさのあつこ:著 [児童書、YA]
(9月にいったん書いたエントリーを、見直して手を入れました)
- 作者: あさのあつこ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 30回
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↑これは、最近出た、文庫版。
私が読んだのは――といっても当時は、図書館で借りたのだけど――教育画劇から出ている版。
教育画劇 (1996.12)
通常24時間以内に発送します。
この本の主人公、巧(たくみ)の弟は青波(せいは)――これって、ブルーウェーブ? ってのはおいといて。
タイトルどおり、野球をする子たちのお話。最初は、過去に出版された、よく似たタイトルのコミックスを連想して、う~ん、と思っていた。文庫版が出たことで、文字通りの青春スポーツ物と捉えている人もいるみたいだけど、それだけじゃないと思う。
されど児童書、さすがに児童書。
野球そのもののお話ももちろん出てくるけれども、野球を通して子どもたちが成長してゆく、周囲の大人が変わってゆく姿を描いて、重い。深い。
実は私は、あまり野球は好きじゃない。
いや、高校生くらいまでは、「ドカベン」なんかも夢中で読んでたし、高校野球も熱心に見てた。心のどこかで(おなじくらい、サッカーも中継してくれないかな)とは思いつつ。
野球はどこか、監督のもの、という意識がある。今年の高校野球のTV中継を見ていても、バッターボックスに立った子どもたちは、いちいち監督を振り返り、サインを確かめていた。
ゲームを進めてゆくのは監督。もちろん、そんな形ばかりではないだろうけれど、でも、高校野球の世界では、やっぱり監督の存在ってのは限りなく大きい。そう感じる。
サッカーのA代表で、現監督のジーコは、自主性を重んじる手法を取っている、という。選手が自ら考え、自ら動く。そこに基本がなければ、どんな戦術を使っても、結局はそれ以上の力は出せない、そんな論も、どこかで読んだ。
本の内容から少しはずれてしまったようだけれど、この本に出てくる子どもたち、とくに主人公の巧は、実に“そこ”にこそ苦悩の元がある、といってもいい。自らをたのむ気持ちが大きくて、頑固、意固地。今どき珍しいと読んでるほうが感じるくらい、自己主張が強い。チームの監督とも、簡単に反抗してしまう。
そんな巧に対峙するのが、キャッチャーの豪(ごう)という男の子。
ある種、類型的かもしれない。孤高の存在のピッチャー、鷹揚でいかにも女房役のキャッチャー。反発し合いながら、切磋琢磨しながら、お互いを認めてゆく。
けれど、あえて“児童書”として子どもが読むならば、この関係は、とても心に響くのではないだろうか。
巧と青波兄弟の母親が、ちょっと問題あり風に描かれているのが、気になるといえば気になる。でも、同じ母親として、やっぱり子どもをダメにするタイプの女性っていると思うから、しかたがないのかも。それに、(同じく母親である)著者の目はやさしくて、彼女にも成長の余地を残しているところが、読んでいて気持ちがいい。実際、巻が進むと、母親も多少、変化してくる。
こんな風に、単なる野球を中心とした物語、というだけでないところが、(野球嫌いの)私が大いに気に入ったゆえん。
著者紹介がさいごになってしまった。「あさのあつこ」さん。ご本人が言ってるとおり、某女優さんと同じ名前で、言葉=音で伝えると、「え?」という顔をされるそうな。
児童文学の同人誌で腕を磨き、ある意味、この作品でブレイク。ますますのご活躍を!
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〔教育画劇版〕
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〔教育画劇版〕
課題図書が決まったって-『秘密の道をぬけて』 [児童書、YA]
第51回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書が決まりました、そうな。
中でも、これがいちばんいいかな。なんてね。
『風神秘抄』 [児童書、YA]
朝刊を開いたら、荻原規子氏の新作案内が載っていた。
『風神秘抄』。
“勾玉三部作”の続き”とのことで、「待ってました!」
児童書の大型新人として『空色勾玉』でデビューした作者。続く『白鳥異伝』『薄紅天女』と三部作を成し、これで終わりと思われた。
『薄紅天女』がキャラクター小説的にも読めるということで、パロディ小説が作られたらしいけれど、そのことに関して、とある雑誌で同人誌少女をかばうというか、身を寄せる発言をしていた。その後、証とばかりに書かれたのかと思うような作、『西の善き魔女〈1〉セラフィールドの少女』(シリーズ1作目)が出た。私には、昨今流行(?)のライトノベルの走りとも言える内容のように感じられたものだったけれど。――ファンタジー小説ということでは、とうに流行だったけれどね。
(続く、『西の善き魔女 (2)』『西の善き魔女 (3)』『西の善き魔女 4- 世界のかなたの森』あり)
“勾玉三部作”が――とくに『空色勾玉』が、がっちりした厳しい(?)内容の“児童書”だったから、こんな軽いタッチのファンタジーも書くんだ、と、その落差に、唸ってしまったのだったけれど。読者に対する真摯な態度という意味では、好感が持てた。
「どんな形であろうとも、作品を愛してくれる人を憎めない」と言ってくれたようで。
それとも、いみじくも上記で私自身がやってしまったけれど、いわゆる権威付けの“児童書”と、ライトノベル的なコメディタッチを含む物語とを厳然と分ける(カテゴライズする)勢力への反発があったとか(?)。
作品評にもどると、三部作といっても、個々の独立した作品として読めるものばかり。今回の『風神秘抄』も、続編としても、外伝としても、またひとつの作品としても満足を与えてくれるだろうことは期待できる。
早速、注文しなくちゃ。
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- 作者: 荻原規子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/05/21
- メディア: 単行本
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“勾玉三部作”
- 作者: 荻原規子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1996/07
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- 作者: 荻原規子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1996/07
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- 作者: 荻原規子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1996/08
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